中国 南寧

日本軍将兵の戦記

吉川彌兵『一兵士が語る軍国主義と平和』(新風舎、東京都、二〇〇七年)六四頁。
(第五師団福山歩兵第四一連隊第一一中隊に属する伍長)

 いつごろであったか、ここにも朝鮮人の慰安婦が来た。年のころ十七、八歳ぐらいから二十歳をあまり出ない者ばかりで、本部の裏の川に洗濯物をしに来ていた。

「なんとべっぴんばかりだろう。もし無事凱旋しても、こんな美人を妻にできる者はそう多くはいまい」と一人の戦友が言えば、他の戦友が「お前の言うことは、日本内地の女性は美人でないということになり、銃後の女性に対し失礼である。自分には他に誓った美しい女性がいる」と言った。〝群鶏の一鶴〟といっても住民もおらず鶴ばかりの美人となる。〔中略〕われらは名誉の美名のもとに自由がなく、「彼女らは占領地区のカフエの女給と言ってだまされて連れてこられている者が多い」と上海だったと思う、朝鮮の五十ぐらいを過ぎた女が言っていた。彼女は何をしているのか、「多分麻薬を買っている者かも知れぬ」と戦友が言っていた。いずれにしても若い彼女らは貧困にして金によって自由がない。硝煙の中、たわむれの恋か一時の線香花火と消え去る。

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