中国 東北 新璦琿
日本軍将兵の戦記
天谷小之吉『戦時下の惜春 私のシベリア抑留記』(新風舎、東京都、一九九六年)三七~三八頁。
(満州第六一二部隊)
果たして次の日曜日、初年兵に外出が許された。すると、なんとまあ浅ましきかな。ほとんど誰もが、我れ先にと花柳小屋を目指した。いや、白状すれば、私もその一人。着いてみると先発組が小屋の外まで並んでいて、あちこちの班から初年兵が勢ぞろいした感じである。〔中略〕 花柳の小屋は平屋建てで、入り口を開けるとまず土間がある。そこには幾つかの椅子があり、ここを待合室とした。順番がきてさらに中へ入ると、竹編みの敷物がある。言うまでもないが、ここが事を致す所であった。終わって待合室とは反対の側へ出ると、そこにはちゃんと洗浄器具が備えられていた。余計なことかも知れぬが、事実として書き添えると、当時の相場は一向かい二円五十銭くらい(ちなみに兵の給与は一、二等兵で月十五円、上等兵で月十八円ほどだった)と記憶している。