カビエン

日本軍将兵の戦記

除野信道「ミッドウェーの以前と以後」五月会編『波涛と流雲と青春と』私家版、一九八〇年、六四六頁、

〔一九四三年〕二月五日、慰安所の店開きをするからという案内が設営隊からあった。招かれた者は駐留各隊の幹部士官。丘の上に無造作につくられた建物に集まった。その中には命からがらラエから退いてきた呉第三特別陸戦隊の崎谷武男もいた。女性は三十人弱。大部分は水商売の前歴者であったが、「こんな前線に出されるとは…」とこぼしていた(彼女らに恩給支給すべしとの提案を期待する)。なかには朝鮮から回されてきた者もあった。また日本語が喋れない小娘もいた。英語と中国語を交互に使って事情を聞くと、「ペナンで夕方の外出禁止命令を知らずに街を歩いていたら、逮捕されここに入れられた」と涙をこぼした。良家の子女のようだったが、戦争の爪跡はこういうところにも及んでいるかと思うと、酒が不味くなった。

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