ラバウル

日本軍将兵の戦記

菅野茂『7%の運命 東部ニューギニア戦線・密林からの生還』光人社NF文庫・二〇〇六年・五二頁。
(ウェワクからラバウルに帰還した兵士の記録)

帰途ラバウルの街の慰安所に寄った。(略)メインストリートの街路樹の下で、船から下りたばかりと思われる女たちの一団(十五、六名)が休息していた。大勢の兵隊がもの珍しそうにその兵隊たちの中にY軍曹と運転手のE上等兵の姿があったので、私たちが近寄ると、「あの娘たちは、海軍の軍属を志願したそうだが、だまされて連れてこられたらしい。あの娘は富山の浴場の娘だと」Eは、指差しながら、気の毒そうに私たちの耳元でささやいた。なるほど言われてみると、どの娘も暗く沈んだ表情。ろくに化粧もなく、どう見ても巷で働く女たちではなかった。炎天の中に和服を着て柳行李を持っている姿が、一層いたましく写った。男も女も滅私奉公の時代である。だが、私には割り切れなかった。こんなことが公然と行われてよいのだろうか。私は胸に噴き上げる者を抑えながらその場を去った。

マップ・資料リストに戻る

 


より大きな地図で 慰安所マップ を表示