ビルマ タイキ

日本軍将兵の戦記

森川勤『靖国街道太平洋戦記』上巻(考古堂書店、新潟市、一九九四年)四二〇頁。
(著者はビルマ憲兵隊司令部の軍医)

「軍医殿、慰安所を開設しますから、衛生状態を検閲して下さい。」
「え! 憲兵隊が慰安所を開設するのか」
「はい…。慰安婦は朝鮮人ですが、まだ来ていません…。」
慰安婦のいない慰安所の衛生検査に、軍医の立ち会いも妙なものである。建物の立地条件、居住性の衛生上の問題かもしれない。
憲兵に案内された地点は、隊本部より四、五〇〇米ほどラングーンよりの密林地帯にあった。雨露を辛うじて凌げるほどのニッパ椰子の粗末な小屋が点々と散っていた。
敵機の銃爆撃を避けて、密林内に建てられた家屋に、環境衛生上、問題がないわけではないが、野に臥し山に臥し、悪戦苦闘する一線将兵からすれば天国である。私は異議のないことを告げた。

マップ・資料リストに戻る