グアム島
日本軍将兵の戦記
門司親徳『空と海の涯で 第一航空艦隊副官の回想』(光人社SF文庫、一九九五年)一三二~一三三頁。
(著者は、呉鎮守府第五特別陸戦隊の主計長兼分隊長)
駐留が長びくことになりそうなので、われわれの隊も毎週一回の上陸(外出)が許された。下士官兵は、警備隊や横五特〔横須賀鎮守府第五特別陸戦隊〕とかち合わない日に上陸日を決められた。
慰安所は、アガニアとスーマイの中間あたりの左手の丘の上と、その少し先の右手の丘の上と二軒あった。木造の西洋館で、女性はチャムロの人たちであった。
軍医長や軍中〔軍医中尉〕が衛生視察に行くというので、私もついて行った。西洋館の中は、個室ばかりで、酒も個室のベッドの傍で飲むようになっていた。女性はあまり美人はいなかったが、体格は良かった。〔中略〕
准士官以上の慰安所は、アガニアに近い海岸通りの、ちょっとした岬の上の林の中にあった。「あかしや」という名の家で、五人の日本人女性がいた。太った人や、いつも首に繃帯を巻いた人や、白痴的でちょっと頽廃した感じの美人など、いろいろであった。ここの女将は、もとダンサーをしていたという近代的な女性で、「あかしや」の近くに住居を持っていた。しゃれた西洋館で、すぐ窓の下に波が打ち寄せていた。 「あかしや」の宴会場は、赤い毛氈の敷いてある簡素な広間で、押し上げ窓を開くと、海が見えた。駐留後、しばらくたって、准士官以上の慰労会があった。太った女性が三味線を弾いて、歌をうたった。
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