日本軍将兵の戦記
宗前鉄男『凍土の上に 私のシベリア物語』私家版、2000年。第八国境守備隊
あさ子は、江原道の日本海に面した小さな漁村の娘だった。八人の子供をかかえて、彼女の父親は小釣りで細々と生計をたてていた。あさ子が二十歳になった春、彼女の父は日本軍慰安婦の求人であることをうすうす知りながら、軍需工場の女工という名日で、あさ子を応募させたのだった。父の言葉を信じ切っていた彼女は、ハイラル市にあるこの慰安所の前に連れてこられても、まだそれとは気付かなかった。あさ子はそこを、女子工員寮とばかり思っていたのだ。
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