中国東北 周水子 

日本軍将兵の戦記

松本正嘉『わが太平洋戦記』私家版、2001年。歩兵第五九連隊第三大隊兵士

(八千代館という慰安所で)他のピーがなみ子と呼んでいたそのピーを部屋に入ってよく見てびっくりした。彼女も驚いている様子だ。病院へ慰間に来て私のベッドでサービスしてくれたあの無口な女性だったのだ。チチハルの慰安所のように忙しそうではなく落ちついている。室内は大体同じだが、部屋の隅に朝鮮独特の大きなタイコ花、札もやし、なんばんなどが雑然と置いてある。裸になった彼女は寝ながら聞きもしないのに話を始めた。
朝鮮人は同じ天皇の赤子なのに、志願兵はあるが徴兵制度がない。この非常時に朝鮮の同胞がお国のためにつくせないのが残念だ。祖国防衛のために苦労している将兵に、何か慰間できたらと思っていた時、日本人の悪質な業者に「皇軍慰問に行かないか」と誘われて、いくらかの現金を受領して契約書に捺印したら、人身売買が成立し合法的に奴隷になってしまった。現地に来て慰問の手段に驚いたが、すでに遅かった。生ける屍になったのだ。私の想像通り、朝鮮の田舎で小学校の教師をしていたから、日本語が上手なのだ。

 

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