黒龍江省 愛琿
日本軍将兵の戦記
米沢音松『音松自伝 我が兵隊物語・抑留物語』私家版、1999年。第六国境守備隊砲兵隊
辺境の国境守備隊にあつて、本部は陣地内にあり、陣地に近づく者は射殺される環境では、一般人は近づかない。外出か公用で、陣地の外に出ないと女性の顔は見たことがなかった。
東京出身の小松三年兵と一緒に外出して、慰安所を見物に行く。兵舎から歩いて二時間はかかる。愛琿駅から北へ二十分、野原の中に四軒が建っている。ずいぶんとお粗末な設備で、古い壊れかかった中国人の農家を改良したもの。部屋は三畳、広くても四畳ぐらいで、部屋の仕切は薄いベニヤ板。照明は暗い裸電球が一個ぶら下がって、部屋にあるのは寝具だけ。入日の扉もベニヤ板で、何とも殺風景な施設である。慰安婦は一軒に五?八名程で、合計でも二十五、六名。慰安婦一人で約三十名から四十名の兵を引き受けることになる。朝鮮人が主で、皆若く、十八歳から二十五歳くらいまでである。