スマトラ島 テルクペトン
日本軍将兵の戦記
小坂芳美『応召記』新風舎、2006年。第一〇二航空基地隊・馬来海軍航空隊員。
タンジュンラカン市を通り越してさらに進むと、スマトラの南端テルクペトン市に達する。〔中略〕市内には〔陸軍〕山本部隊が管轄する慰安所が二か所あって、一つは下士官・兵用、もう一つは士官専用のものである。兵隊たちはテーブルをはさんで女の子と談笑し合っていた。下士官・兵用の慰安所では現地人が、士官用の慰安所「南十字星」では朝鮮系を含む日本人慰安婦が相手をする。海軍兵は階級にかかわらず「南十字星」への出入りが認められていた。現地人の慰安婦の中には、学校も出て読み書きができるのに、生計が苦しくて家に仕送りするために働いている健気な娘もおった。