2017年9月22日、米国サンフランシスコ市に日本軍「慰安婦」記念碑が建てられました。設置を主導したのは「慰安婦」正義連盟(“Comfort Women” Justice Coalition)という、多民族な人々によって構成された団体です。サンフランシスコ市の日本軍「慰安婦」記念碑は、公共の場に設置されるため、市民の参加を経て決定されるべきであるという考えから、デザインの公募・選考を経て選ばれました。
サンフランシスコ市議会は2017年11月22日、全会一致で「慰安婦」正義連盟による「慰安婦」記念碑の市への寄贈を受け入れました。これに対して吉村大阪市長はサンフランシスコ市が寄贈を受け入れるのであれば大阪市との姉妹都市を解消すると主張して、外交問題に発展しました。
そこで、その流れを新聞記事で追ってみました。まず、日本の新聞報道から、次に海外・英語圏の報道をみていきます。
◉日本メディア報道
・朝日新聞 2017年02月07日 朝刊 大阪市内・1地方
「慰安婦像の承認、大阪市長「遺憾」 サンフランシスコに書簡 /大阪府
大阪市の吉村洋文市長は6日、姉妹都市の米サンフランシスコ市芸術委員会が設置予定の慰安婦像のデザイン案と碑文案を承認したことを「遺憾」とする公開書簡を送ったと発表した。
書簡はサンフランシスコ市長宛てで、1日付。吉村市長は「歴史の直視ではなく日本批判」「両市の交流、日米関係にも悪影響を及ぼす」とした。像設置を問題視する書簡は橋下徹・前大阪市長も2015年に計3回送った。 (略)
・沖縄タイムス 2017年9月24日
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/147441
「米に新たな慰安婦像/中・韓・比の少女デザイン」
【サンフランシスコ共同】米西部カリフォルニア州サンフランシスコ市で22日、旧日本軍の従軍慰安婦問題を象徴する少女像の除幕式が行われた。中華街に隣接する公園の片隅に設けられ、中国、韓国、フィリピンの少女3人が背中合わせに手をつないで立つデザイン。除幕式には元慰安婦らも出席した。(略)
・朝日新聞 2017年09月26日 朝刊
「「市営公園に置くなら姉妹都市解消」 米サンフランシスコ市の慰安婦像 大阪市長が言及【大阪】
大阪市の吉村洋文市長は25日、姉妹都市の米サンフランシスコ市に建てられた旧日本軍の慰安婦像をめぐり、現地の市営公園に組み込まれれば「姉妹都市関係は解消する」と述べた。市役所で報道陣に語った。 (略) 像の碑文に「数十万人の女性が性奴隷にされた」とあり、吉村氏は「日本政府の見解と違う」と主張した。今月中にも抗議の文書を送るという。(略)
・朝日新聞 2017年10月05日 朝刊
「姉妹都市解消「恥ずべきこと」 大阪市長 【大阪】
大阪市の吉村洋文市長が姉妹都市の米サンフランシスコ市に対し、旧日本軍の慰安婦像を市営公園に組み込むなら「姉妹都市関係は解消する」と発言した問題で、サンフランシスコ市のエドウィン・リー市長が吉村市長に書簡を送り、関係解消について「恥ずべきことだ」と批判した。(略)
【ウェブ版:朝日新聞デジタル「大阪市長に米姉妹都市市長から批判の書簡 慰安婦像巡り
2017年10月4日 http://www.asahi.com/articles/ASKB45QNGKB4PTIL019.html】
・毎日新聞 2017年10月5日 大阪朝刊
「慰安婦像計画:大阪市長が懸念 姉妹都市解消も 米サンフランシスコ市「落胆」
(略)吉村市長は姉妹都市の解消にも言及して計画が実現しないよう書面で求めたが、サンフランシスコ市長からは「大きな落胆を覚える」との返書が届いたという。大阪市が4日、明らかにした。(略)今月2日付のエドウィン・リー市長の返書では、移設の有無を明確にしていないが、「公選の職にある者として、たとえ批判にさらされることがあろうとも地域に対して応えていくことが責務」と移管の容認を示唆。姉妹関係が解消された場合、「両市の住民を傷つける」と憂慮する内容だった。(略)
・朝日新聞デジタル 2017年10月30日
http://www.asahi.com/articles/ASKBZ61S3KBZPTIL01L.html
「大阪市長、慰安婦像設置の米姉妹都市へ会談申し入れ
(略) 大阪市の吉村洋文市長は30日、姉妹都市のサンフランシスコ市に建てられた旧日本軍の慰安婦像をめぐり、同市のエドウィン・リー市長に会談を申し入れたと明らかにした。(略)
・毎日新聞 2017年11月2日 08時44分
https://mainichi.jp/articles/20171102/k00/00e/040/199000c
「サンフランシスコで慰安婦像計画 友好60年ヒビ
(略)「慰安婦像の設置は日本への政治的バッシングだ」。吉村氏は毎日新聞の取材に強調した。計画が撤回されない限りは姉妹都市関係を解消する考えは変わらず、年内に最終判断すると明言。サンフランシスコ市側には11月半ばにエドウィン・リー市長と直接面談したい意向を伝えた。(略)
・毎日新聞 2017年11月15日 大阪夕刊
「米国:慰安婦像、受贈を決議 サンフランシスコ議会
米サンフランシスコ市議会は14日、市民団体が市内に建てた旧日本軍の従軍慰安婦を象徴する像の寄贈を受ける議案を全会一致で可決した。エドウィン・リー市長の承認を経て、像は市有化される。(略)
【ウェブ版:毎日新聞 2017年11月15日「慰安婦像、受贈を決議 サンフランシスコ市議会」 https://mainichi.jp/articles/20171115/k00/00e/030/291000c】
・毎日新聞 2017年11月16日 東京朝刊
「米国:3例目の従軍慰安婦像
(略)米国で公有地に慰安婦像が設置されるのは韓国系団体が主導した西部カリフォルニア州グレンデール市と南部ジョージア州ブルックヘブン市に続き3例目。
・朝日新聞 2017年11月22日 朝刊
「慰安婦像受け入れ、首相「極めて遺憾」
安倍晋三首相は21日の衆院本会議の代表質問で、米サンフランシスコ市議会が旧日本軍の慰安婦像の寄贈を民間団体から受ける議案を全会一致で可決したことに対し、「我が国政府の立場と相いれない極めて遺憾なこと」との考えを示した。(略)
【ウェブ版:朝日新聞デジタル「慰安婦像受け入れ、首相「極めて遺憾」
2017年11月22日 http://www.asahi.com/articles/DA3S13239101.html】
・朝日新聞 2017年11月23日 朝刊 大阪市内・1地方
「姉妹都市「解消より対話を」 自公市議団、大阪市長に申し入れ /大阪府
米サンフランシスコ市に建てられた旧日本軍の慰安婦像をめぐり、大阪市が姉妹都市関係の解消を検討している問題で、市議会の自民・公明市議団は22日、解消するのではなく、交流を継続しながら対話を通じた解決に努めるよう、吉村洋文市長に申し入れた。(略)
・朝日新聞 2017年11月24日 朝刊
「サンフランシスコと姉妹都市を解消方針 大阪市、慰安婦像巡り
米サンフランシスコ市のエドウィン・リー市長は22日、民間団体が現地に建てた慰安婦像の寄贈を受け入れる決議案に署名した。これにより、像は同市の所有となり、寄贈の受け入れに反対してきた大阪市の吉村洋文市長は23日、60年にわたる両市の姉妹都市関係を解消する方針を表明した。(略)
【ウェブ版:朝日新聞デジタル「サンフランシスコと姉妹都市を解消方針 大阪市、慰安婦像巡り
2017年11月24日 http://www.asahi.com/articles/DA3S13242707.html】
・毎日新聞 2017.11.24 大阪夕刊
「慰安婦像:米サンフランシスコ市設置 民間交流、補助も中止 大阪市長「関係継続は問題」
(略)吉村市長はこれまで、民間交流事業への補助金支出は継続する意向を示していたが、「姉妹都市が解消される以上、税は投入できない」と明言し、「関係継続は問題だという意見が圧倒的に多く届いている。真の国際都市を目指すなら、明確に意思表示することが大阪の利益、国益になる」と述べた。今後、市議会の各派幹事長会に報告し、12月中に文書で提携解消を先方に通知する。(略)
【ウェブ版:毎日新聞「米サンフランシスコ市設置 民間交流、補助も中止 大阪市長「関係継続は問題」
2017年11月24日 https://mainichi.jp/articles/20171124/ddf/041/030/022000c】
・朝日新聞 2017年11月25日 朝刊
「民間交流、補助打ち切りへ 大阪市、姉妹都市解消を表明 慰安婦像巡り
(略)吉村市長は「姉妹都市の要請をみじんも受け入れてもらえなかった」と報道陣に述べ、関係解消を明言した。民間の交流事業への補助金も打ち切る。(略)
・朝日新聞 2017年12月01日 朝刊 大阪市内・1地方
「姉妹都市の解消、議会に市長説明 大阪市 /大阪府
サンフランシスコ市に建てられた慰安婦像の市有化を巡り、吉村洋文大阪市長は30日、同市との姉妹都市関係を解消する方針を市議会に説明した。
吉村市長は各会派の幹事長が集まる会議に出席し、「サンフランシスコ市長が(慰安婦像を市有化する議案に)自ら署名し、承認したことで、姉妹都市関係が根本から揺るがされる事態に至った」と説明。(略)
【ウェブ版:朝日デジタル「民間交流、補助打ち切りへ 大阪市、姉妹都市解消を表明 慰安婦像巡り
2017年11月25日 http://www.asahi.com/articles/DA3S13243908.html】
・朝日新聞 2017年12月06日 朝刊 大阪市内・1地方
「姉妹都市の解消、大阪市長に撤回要請 「市民有志の会」 /大阪府
吉村洋文大阪市長がサンフランシスコ市との姉妹都市を解消する方針を示していることについて、「市民有志の会」が5日、手続きの中止と関係の継続を求める要請書を吉村市長と、大阪維新の会をのぞく市議会の全会派に出した。
・毎日新聞 2017年12月12日
https://mainichi.jp/articles/20171213/k00/00m/040/114000c
「吉村市長、姉妹都市提携解消の手続き完了へ
米サンフランシスコ市に建立された旧日本軍の従軍慰安婦を象徴する像を巡り、大阪市の吉村洋文市長は12日、週内に姉妹都市提携を解消する決定の手続きを完了し、相手方に通知する考えを明らかにした。市議会主要会派は同日の定例会最終日に提携解消や継続を求める決議案をそれぞれ提案したが、いずれも賛成少数で否決された。ただし、姉妹都市提携の解消に議会の同意は必要ない。(略)この日の本会議で、市長を支える大阪維新の会はサンフランシスコ市の対応を「友好関係を根底から覆すものだ」として提携解消を求める決議案を提出。自民、公明両党は「時の首長の判断で断ち切ることは過去や未来に大きな損失となる」として交流継続を共同提案し、共産党も別に解消撤回を求めた。いずれの決議案も可決に必要な過半数を得られなかった。
(略)
・日本経済新聞 2017年12月12日
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24549600S7A211C1AC8000/
「米市との姉妹都市提携、週内に解消を決定 大阪市
大阪市議会は12日の本会議で、姉妹都市の米サンフランシスコ市が慰安婦像を受け入れたことなどに反対する決議案を大阪維新の会、自民、公明両党などの賛成多数で可決した。
吉村洋文市長は同日、記者団に「慰安婦像の設置に市議会が反対の意思表示をしたことは大きい」と述べ、週内に姉妹都市の提携解消を市として正式に決めることを明らかにした。
国が像の撤去などに向けて継続的に取り組むことを求める意見書も採択。(略)
・朝日新聞デジタル 2017年12月12日
http://www.asahi.com/articles/ASKDD3GRLKDDPTIL00F.html
「姉妹都市「解消」「継続」、どちらも否決 大阪市議会
大阪市議会は12日、米サンフランシスコ市との姉妹都市関係について「解消を求める」「継続を求める」という決議案をそれぞれ審議し、いずれも賛成少数で否決した。吉村洋文市長は今後、姉妹都市関係の解消をサンフランシスコ市に書簡で通知する。(略)大阪維新の会は、サンフランシスコ市が11月に現地の慰安婦像を市有化したことについて「友好関係を根底から覆すものだ」として、姉妹都市関係の「解消」を主張。公明党と自民党は「歴史のある交流関係を、時の首長の判断で断ち切ってしまうのは大きな損失だ」と「継続」を求めた。(略) 共産党は「吉村市長の主張は『慰安婦』の存在すら否定するものと受け取られかねない」との決議案を提出したが、否決された。
一方、サンフランシスコ市が慰安婦像を市有化したことについて「看過できない」と批判する自民提出の決議案は、維新、公明、自民が賛成して可決した。(略)
・毎日新聞 2017年12月13日
https://mainichi.jp/articles/20171213/ddn/041/030/042000c
「姉妹都市解消、週内決定 大阪市長、サンフランシスコと
米サンフランシスコ市に建立された旧日本軍の従軍慰安婦を象徴する像を巡り、大阪市の吉村洋文市長は12日、週内に姉妹都市提携を解消する決定の手続きを完了し、相手方に通知する考えを明らかにした。(略)
◉その他資料
*サンフランシスコ市「慰安婦」記念碑設置団体の声明
“Comfort Women” Justice Coalition
「「慰安婦」記念碑に対し寄せられた反対意見への返答 「慰安婦」正義連盟 声明」(日本語)
「CWJC Statement on SF-Osaka Controversy」(英語)
(2017年12月7日)
ウェブサイト
http://remembercomfortwomen.org/cwjc-statement-on-sf-osaka/
PDF(日本語は英語の後)
*サンフランシスコ市 日本軍「慰安婦」記念碑建設をめぐる公聴会の様子(英語)
http://sanfrancisco.granicus.com/MediaPlayer.php?view_id=178&clip_id=23681