7-5 アメリカ下院決議への日本からの応答(2007年)

「慰安婦」問題の解決には何が必要でしょうか。実は、解決に向けた提言がすでにあります。ここでは、これを紹介します。

1-5画像  2007年7月30日、アメリカ下院本会議で「慰安婦」謝罪要求決議が可決された翌日の7月31日に 、これまで「慰安婦」問題の調査研究を担ってきた日本の戦争責任資料センター、「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(当時。現在は「戦争と女性への暴力」リサーチ・アクションセンター)、アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)の三団体で、「日本軍「慰安婦」問題における謝罪には何が必要か」という提言を日本政府に提出しました。

さらに8月11日にはこれまで発掘された資料や調査研究の蓄積と成果、被害女性たちの証言をもとに、シンポジウム「ここまでわかった!日本軍『慰安婦』制度」を開催しました(シンポジウムの発言を収録した本が同名で、同年末にかもがわ出版から出版されました)。

この提言には、「慰安婦」問題に取り組む日本の諸団体が賛同しました。その意味で、集約的な提言になっているので、ぜひお読みください。

目次

提 言

日本軍「慰安婦」問題における謝罪には何が必要か

アメリカ議会下院に「慰安婦」決議案が提出されたことを機に、安倍首相は「慰安婦」問題における旧日本軍の強制性を否定する発言をおこない、今もそれを撤回していない。しかし、強制性に関する事実関係はアジア各地の被害女性から証言がなされており、被害女性の闘いにより日本の最高裁判所の判決でも認定されているものであり、かつ、これまで積み上げられた調査・研究からも明らかである。

日本政府は「これまで何度も謝罪した」とくりかえすが、それは被害女性たちの納得を得る謝罪ではなかった。その理由は第一に、これらの「謝罪」が国家の責任を明確かつ公的に表明したうえでなされなかったこと、第二に、「慰安婦」問題に対する国の責任を否定する言説が、閣僚を含めて繰り返されたことにより謝罪の信頼が失われたこと、第三に、教科書から「慰安婦」に関する記述が激減したことを「良かった」とする閣僚発言等が野放しにされ、事実に基づいた認識を培うべき教育への取り組みがなされてこなかったこと、第四に、謝罪が全地域の被害者個人に直接届けられなかったこと、第五に、謝罪とは賠償を伴うものであるが、それがなされてこなかったこと、などである。

被害国をはじめ国際社会が日本の対応を注視している今、被害者が納得する謝罪とはどのようなものか、また、日本は何をなすべきかを考えなければならない。そこで、これまで「慰安婦」裁判を支援し、あるいは調査・研究に取り組むなどして「慰安婦」問題の真の解決を願ってきた立場から、日本政府がいかなる対応をとることが必要であるかについて、私たちは提言する。

提 言

1、   日本政府は、旧日本軍および日本政府が、満州事変開始からアジア太平洋戦争の終結までの間、植民地や占領地などの女性を本人の意思に反して「慰安婦」にし、強制的に性奴隷状態においたこと、及びこうした行為が当時の人権水準に照らしても違法なものであったことを明確に認めること。

2、   その上で、日本政府または国会は、閣議決定や国会決議などの公的な形をもって、日本国家としての責任を明確にした謝罪を表明すること。

3、   日本政府は、被害を与えた全ての地域の女性たち一人ひとりに、謝罪の手紙を届けること。

4、   この謝罪の意を示すため、日本政府は被害者に対して新たな立法をもって賠償金の支払をおこなうこと。

なお、この謝罪が日本の真意であることを表わすため、以下の措置を講じる。

(1)      日本政府は、全ての非公開文書を公開し、十全な真相究明を行うこと。また、被害国すべての被害実態を調査し、様々な被害の実態を認識すること。

(2)      日本政府は、この問題を後世に正しく伝え、再び同じことが繰り返されないよう、教育的施策を講じること。

(3)      日本政府は、日本軍「慰安婦」制度の強制性・犯罪性を否定するいかなる言動に対しても、毅然とした態度で反駁し、被害者の尊厳を守ること。

以上、提言する。

2007年7月31日

日本の戦争責任資料センター
「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク
アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」

【賛同団体】

戦後責任を問う・関釜裁判を支援する会
フィリピン人元「従軍慰安婦」を支援する会
フィリピン元「慰安婦」支援ネット三多摩(ロラネット)
フィリピン人元「慰安婦」と共にLUNAS・ルナス
日本カトリック正義と平和協議会
在日の「慰安婦」裁判を支える会
中国人「慰安婦」裁判を支援する会
山西省・明らかにする会
台湾の元「慰安婦」裁判を支える会
ハイナン・ネット
日本軍「慰安婦」問題行動ネットワーク
日本キリスト教協議会(NCC)女性委員会
売買春問題ととりくむ会
強制連行・企業責任追及裁判全国ネットワーク
旧日本軍による性的被害女性を支える会
在日韓国民主女性会
旧日本軍性奴隷問題の解決を求める全国同時企画・京都実行委員会
東ティモール全国協議会
日本軍「慰安婦」歴史館後援会
カトリック東京教区正義と平和委員会
日本キリスト教会
日本軍「慰安婦」問題と取り組む会
日本キリスト教婦人矯風会
早よつくろう!
「慰安婦」問題解決法・ネットふくおか
「慰安婦」問題と取り組む九州キリスト者の会
女性エンパワーメントセンター福岡
過去を克服して共生のアジアをめざす共同行動実行委員会
全国同時企画・福岡実行委員会
関釜裁判を支える広島連絡会
平和(ぴょんふぁ)会
Maluの会(日本軍占領期東ティモール性奴隷制に取り組む会)
あづみの道草あかとんぼの会
日本軍性奴隷問題の解決を求める会in大阪

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