『咲ききれなかった花――ハルモニたちの終わらない美術の時間』

【書籍情報】
・著者:イ・ギョンシン、梁澄子 訳
・出版社:アジュマブックス
・刊行年:2021年
・体裁:46判・232頁

【概要】

1993年〜1997年までのあいだ、日本軍性奴隷制被害者ハルモニたちに、絵を教えていた女性がいた。

美大を卒業したばかりの20代の女性が、ハングルを教えるボランティアとして、ハルモニたちが暮らす「ナヌムの家」を訪れた日から本書ははじまる。壮絶な性被害を体験した女性たちを前に、天気の話くらいしかできない自分、無力な自分に逃げるように帰宅したあと、「自分にできることはないか」と考え、「そうだ、絵なら教えられる」と思いついたことをきっかけに、ハルモニたちとの美術の時間がうまれた。
本書は、ハルモニたちの美術の先生として共に時を過ごしたイ・ギョンシンが2018年に記した美術の時間の物語だ。

はじめは身の回りにあるモノを実写していく時間だった。ある日、ナヌムの家に行くと、ハルモニたちの空気が怒りに満ちていた。日本政府が「慰安婦」問題について否定したニュースが流れたのだ。美術の先生は今日は絵の授業は無理かも・・・と思いながらも、ハルモニたちにある提案をする。

そしてその提案が思わぬ方向に、ハルモニたちを、そして著者であるイ・ギョンシンさんを導くことになる。

絵を描くことが、壮絶なトラウマを抱えた人たちにとってどのような力になるのか。性暴力でうけたトラウマを治療するという概念もない時代に、美術の時間を通して自らの過去を「描いた」ハルモニたちとの時間が丁寧に描かれる。

​この時間を通して数多く残された絵の背景にあった物語、またハルモニたちの活き活きとした言葉や、涙、笑いが蘇る。(版元HPより)

【著者紹介】

イ・ギョンシン

弘益大学絵画科を卒業し1993年から5年間、ナヌムの家に暮らす日本軍性奴隷制被害者ハルモニとの美術の時間をとおして世代を越えた温かい友情を育んだ。

内外でハルモニたちの絵の展示会を開き、日本軍性奴隷制問題を知らせることに一助した。ハルモニたちとの美術の時間をきっかけに仁荷大学美術教育大学院で精神疾患患者の美術治療の可能性について学んだ。このような経験は自ずと美術の公共的・社会的順機能に対する関心へとつながり、その後、国内移住女性たちを対象とする美術治療授業をおこなってきた。

日本軍性奴隷制問題をテーマにした絵を描き、現在も画家として作品を製作し韓国、日本、ドイツ等で展示会を開いている。

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