韓国・JTBCの放送で『〈平和の少女像〉はなぜ座り続けているのか』が紹介されました!
2016年3月16日配信のJTBC放送 「日本で<少女像>守る運動……安倍政権の移転要求の碑」金富子インタビュー http://news.jtbc.joins.com/html/725/NB11193725.html
2016年3月16日配信のJTBC放送 「日本で<少女像>守る運動……安倍政権の移転要求の碑」金富子インタビュー http://news.jtbc.joins.com/html/725/NB11193725.html
2016年3月15日配信の聯合ニュース 「少女像は反日の象徴ではなく、歴史の教訓の象徴物…日本の活動家の本」 http://www.yonhapnews.co.kr/bulletin/2016/03/15/0200000000AKR20160315002700073.HTML?from=search
〈平和の少女像〉制作者キム・ソギョンさん、キム・ウンソンさんの3分メッセージアップしました。 https://youtu.be/Qj25r0wCPpw?list=PLQPDSPwRpGNq9JSJI7YKbVdDULPpEwwvV
CEDAW日本審査のまとめが国連人権高等弁務官事務所(OHCHR) (英語)Committee on the Elimination of Discrimination Against Women examines reports of Japan http://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=17052&LangID=E 《解説》p7日本軍「慰安婦」問題については、日本政府が「慰安婦」問題が委員会の権限外であると主張したこと、日韓合意は被害者中心のアプローチではないこと、すでに死去した被害者がいること、教科書の記載の削除したことが遺憾であるとしました。そして、指導的立場にある者や公職者は「慰安婦」被害者を中傷するような発言をやめること、賠償、公式謝罪、回復支援などを被害者に提供すること、教科書に「慰安婦」問題を記載し教育に取り組むこと、被害者中心の解決手段を取ることなどを求めています。
能川元一さんに寄稿してもらいました。 先に当サイトでも「関連イベント」として告知されていたとおり、2016年2月14日(日)に大阪市のPLP会館にて「日本軍「慰安婦」問題=被害者不在の「合意」は「解決」ではない!〜日韓外相会談・朴裕河問題を批判する〜」(主催:日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワーク)が開催され、鄭栄桓・明治学院大学准教授が講演者として登壇された。報告者は一聴衆として参加したので簡単に講演の様子を報告したい。 なお報告者は所用のため講演後に会場を離れねばならなかったため、その後の質疑応答や団体アピールなどには立ち会っていない。また、当日配布された資料と私自身のメモおよび記憶に基づく報告であり、もし鄭栄桓さんの実際の発言との間に不一致などがあるとすれば、それは鄭栄桓さんや主催者ではなくひとえに報告者に責のあることである。 会場にはほぼ満席と言ってよいほどの参加者が詰めかけ、この問題に関心を持つ市民の年末の日韓「合意」に対する関心(ないしは危機感)の高さを伺わせた。 鄭栄桓さんの講演はまず昨年12月28日の日韓外相会談と朴裕河氏の著書『帝国の慰安婦』(朝日新聞出版、2014年)との間にどのようなつながりがあるのか? という点についての解説から始まった。外相会談に至るまでの過程に朴裕河氏が関与していたわけでもないのに、この2つのテーマを結びつけることができるのはなぜか? 鄭栄桓さんは日本の主流メディアがこの「合意」を強く支持するわけでも逆に激しく批判するわけでもなく、関心そのものが低調であることを指摘された。そして「もうこの問題は終わったこと」とでも言わんばかりの態度を醸成するのに貢献したのが、いわゆる「リベラル」なメディアや知識人から『帝国の慰安婦』が強い支持を集めているという現象なのだ、と。鄭栄桓さんによれば、『帝国の慰安婦』を読み解くことにより明らかになってくるのは、「日本社会は『慰安婦』がどのような存在であって欲しいと望んでいるのか?」という日本社会の欲望にほかならない。 では『帝国の慰安婦』とはどのような書物なのか。鄭栄桓さんはその基本的な主張(テーゼ)を5つにまとめている(報告者によって表現は簡略化されている)。 (1)「朝鮮人慰安婦」は日本人の「慰安婦」と同様な「帝国の慰安婦」である(さらにこれは「帝国の慰安婦」に期待された客観的役割についての主張と、日本兵に対して「同志意識」をもっていた「朝鮮人慰安婦」の主観的意識についての主張に分けることができる) (2)主犯は「慰安所」業者であり、日本軍の責任は制度の「発想」と「黙認」に対するもののみ (3)「性奴隷」説批判(行われたのは広義の「売春」) (4)日本政府の法的責任は問えない (5)戦後の日本政府は実質的な謝罪と補償を行った 講演の中盤ではこのようなテーゼを導き出すに至る『帝国の慰安婦』の方法の不備への具体的な批判が展開された。同書が資料の強引、恣意的な解釈などの問題点をはらんでしまうのは、本来ならば史料にもとづいてこれらのテーゼが論証されねばならないはずなのに、この本ではテーゼを前提としてそれに合致するように史料が解釈されてしまうからである、という指摘は報告者には大変説得力のあるものに思えた。『帝国の慰安婦』の方法上の問題点の詳細については、いずれ主催者からなんらかのかたちで発表されるであろう講演の記録か、まもなく刊行予定の鄭栄桓さんの著書をお待ちいただきたい。あるいは鄭栄桓さんのブログ「日朝国交『正常化』と植民地支配責任」の記事のうち、まずは「朴裕河『帝国の慰安婦』の「方法」について」(1)〜(7)を参照されたい。ここでは、『帝国の慰安婦』という本とのつきあい方について鄭栄桓さんが示された、実に明快な整理についてご紹介しておきたい。 『帝国の慰安婦』の本文は次のような一節で始まっている。 「慰安婦」とは一体誰のことだろうか。韓国にとって慰安婦とはまずは〈日本軍に強制連行された朝鮮人の無垢な少女たち〉である。しかし慰安婦に対する謝罪と補償をめぐる問題―いわゆる「慰安婦問題」をなかったものとする否定者たちは、〈慰安婦とは自分から軍について歩いた、ただの売春婦〉と考えている。そしてこの二十余年間、日韓の人々はその両方の記憶をめぐって激しく対立してきた。(『帝国の慰安婦』23ページ) ここではニセの二項対立が提示されていることを鄭栄桓さんは指摘する。「韓国」に対置されるのは「日本」ではなくなぜか「日本の否定者」である。しかもその「日本の否定者」の主張は極めて狭く理解されている。ここで抜け落ちているのは「慰安婦」たちの境遇が悲惨であったことはあえて否定せず、しかし日本軍・日本政府の責任は認めようとしないような歴史修正主義者たちの主張—鄭栄桓さんが永井和・京都大学教授の表現を借りて「日本軍無実論」と評するものである。このニセの二項対立をうけいれて『帝国の慰安婦』を読んでしまうと、この本があたかも日本の歴史修正主義にも反対しているかのような印象をもってしまうことになるが、実際には『帝国の慰安婦』の主張は事実上の「日本無罪論」にほかならない。 『正論』や『WiLL』といった論壇誌上で展開されている日本軍「慰安婦」問題否認論を実際に読んでいれば、「日本の否定者」たちの主張を〈慰安婦とは自分から軍について歩いた、ただの売春婦〉と要約してしまうのが誤りであることは明らかだ。 以上のような「ニセの二項対立」についての指摘は、『帝国の慰安婦』を正しく読むための重要な鍵であるとともに、「なぜこの本がいわゆるリベラルなメディア、知識人にも高く評価されてしまうのか?」を理解するうえでも重要な鍵を与えてくれると思われ、報告者は非常に感銘を受けた。 『帝国の慰安婦』によってあたかも歴史修正主義的ではないかのように偽装された「日本無罪論」は、昨年末の日韓「合意」における日本政府の立場でもある。岸田外相の発表が「多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた」としながらも、その傷つけた主体が誰であるかについては「当時の軍の関与の下に」というあいまいな表現しか用いていなかったことを思い出していただきたい。このような「合意」に対して主要メディア、主要政党から強い反対が出てこないという現状と、『帝国の慰安婦』に対してこの社会が与えた高い評価とはたしかに密接に結びついているように思われる。「朴裕河現象」を問いなおすことはいまの日本社会を問いなおすことにほかならない、という思いを新たにして報告者は会場を後にした。このような有意義な集会を企画・実行してくださった主催者にお礼申し上げたい。
昨年十二月、日韓両政府が発表した「慰安婦」問題に関する日韓「合意」を考える連続シンポジウムが二十七日と来月十九日に東京都内で開催される。韓国の歴史学者らを招き、被害女性の声に耳を傾けることなく「最終解決」とされた日韓「合意」の問題点を浮き彫りにする。 二十七日は午後一時半から午後五時十五分まで千代田区猿楽町二、韓国YMCAで、中央大学教授(日本史)の吉見義明さんと明治学院大学准教授(朝鮮近現代史・在日朝鮮人史)の鄭栄桓(チョンヨンファン)さんが講演。作家の北原みのりさん、東京外語大学教授の金富子(キムプジャ)さんがコメントする。 来月十九日は午後零時半から千代田区神田駿河台三、中央大学駿河台記念館で、韓国聖公会大学教授(歴史学)の韓洪九(ハンホング)さんが講演。日本軍「慰安婦」問題解決全国行動共同代表の梁澄子さん、吉見さんのコメントのほか、立教大学教授(日本近現代史、女性史)の小野沢あかねさんがあいさつする。 参加費は、それぞれ一般千円、学生など五百円。問い合わせは、共催者の日本軍「慰安婦」問題webサイト制作委員会=http://fightforjustice.info=へ。(土田修) リンク http://www.tokyo-np.co.jp/article/metropolitan/list/201602/CK2016022402000188.html
2015年12月28日、日韓両外相が発表した「慰安婦」問題に関する「合意」は、何よりも日本軍「慰安婦」被害者の方がたの声に耳を傾けることなく「最終解決」とした点で容認できません。安倍政権は、形式的な「責任」と「謝罪」の表明と、韓国政府が設立する財団への10億円拠出だけで、「慰安婦」問題を「最終かつ不可逆的」に終わらせると約束させました。歴史教育に言及しないばかりか、朴槿恵政権は「平和の少女像」(平和の碑)の撤去・移転まで示唆しています。 日韓「合意」に対し、日本では歓迎ムードですが、韓国では被害女性たちや支援団体含め全国的な抗議運動が起こっています。 日本と韓国の世論の落差はどこに起因するのか―― 被害女性が望んでいない「合意」で「慰安婦」問題の幕引きは許されません。 2つのシンポジウムをとおして、今後の課題を浮き彫りにします。 チラシPDF(18.2MB) ————————————————– 日韓「合意」と日本の「慰安婦」問題認識 ――忘却のための「解決」は許されない ■「日韓「合意」の何が問題なのか」 吉見義明(日本史/中央大学教授) ■『帝国の慰安婦』事態と日本の知識人 鄭栄桓(チョン・ヨンファン、朝鮮近現代史・在日朝鮮人史/明治学院大学准教授) コメント:北原みのり(作家)、金富子(植民地朝鮮ジェンダー史/東京外国語大学教授) 主催者あいさつ:中野敏男(歴史社会学/東京外国語大学教授) コーディネーター:梁澄子(日本軍「慰安婦」問題解決全国行動共同代表 ●日時:2016年2月27日(土)13:00開場、13:30~17:15 ●会場:韓国YMCA地下ホール・スペースY(JR「水道橋」東口5分) ●参加費:一般1000円(非正規・学生500円) ●共催:日韓「合意」と日本の「慰安婦」問題認識シンポジウム実行委員会、 日本軍「慰安婦」問題web サイト制作委員会(FFJ) ●協力 御茶の水書房 ●問合せ→ http://fightforjustice.info/?page_id=601#contact ————————————————– 「慰安婦」問題と現代韓国 ――日韓「合意」の何が問題か 韓 国を代表する韓国現代史研究者・アクテビィストの韓洪九さん(聖公会大学教授、Fight for Justiceブックレット3の共著者)を招いて、韓国の歴史的社会的文脈のなかで「慰安婦」問題がどう扱われてきたのか、今回の日韓「合意」をどうみる のか、朴槿恵政権はなぜ「合意」を推進したのかに関して講演を聴き、さらにコメンテーターとの応答を通じて、今後の課題を浮き彫りにします。 ■講演:韓洪九(ハン・ホング) コメント:梁澄子(ヤン・チンジャ、日本軍「慰安婦」問題解決全国行動共同代表) 吉見義明(日本史/中央大学教授) 主催者あいさつ:小野沢あかね(日本近現代史、女性史/立教大学教授) コーディネーター:金富子(植民地朝鮮ジェンダー史/東京外国語大学教授) ●日時:2016年3月19日(土) 12:00開場、12:30~15:45 ●会場:中央大学駿河台記念館281教室 (JR中央・総武線「御茶ノ水駅」3分、丸の内線「御茶ノ水駅」6分、 千代田線「新御茶ノ水駅」5分) ●参加費:一般1000円(非正規・学生500円) ●主催:日本軍「慰安婦」問題web サイト制作委員会 (日本の戦争責任資料センター 「戦争と女性への暴力」リサーチ・アクションセンター(VAWW RAC)) ●協力:御茶の水書房 ●問合せ→ http://fightforjustice.info/?page_id=601#contact * 韓洪九:歴史学者。韓国聖公会大学教養学部教授。NGO平和博物館の創設メンバー。日本語で読める著書に『韓洪九の韓国現代史――韓国とはどういう国か』 『韓洪九の韓国現代史Ⅱ――負の歴史から何を学ぶのか』(平凡社)、『倒れゆく韓国』(朝日新聞出版)、最近刊『韓国・独裁のための時代―― 朴正煕「維新」が今よみがえる』(彩流社)など。Fight for Justiceブックレット3『朝鮮人「慰安婦」と植民地支配責任 Q&Aあなたの疑問に答えます』にインタビュー「自国の加害の歴史とむきあう~事実認 定と謝罪なき「和解」はない」収録。 チラシPDF(7MB) 【シンポジウム賛同カンパのお願い】 海外ゲスト招聘のためご支援よろしくお願いします。 賛同団体名は当日資料に明記します。 個人:一口1000円/団体:一口3000円 ■郵便振替:00160ー4ー323057 【口座名】FFJ(エフエフジェー) *通信欄に「シンポ賛同金」とお書きください。 チラシPDF(18.2MB)
コラム『《少女像》はどのようにつくられたのか?~作家キム・ソギョン、キム・ウンソンの思い』をアップしました。 《少女像》はどのようにつくられたのか? 〜作家キム・ソギョン、キム・ウンソンの思い
2015年12月31日 日韓外相の政治的妥結に対するwamからの提言 http://wam-peace.org/20151231/ 声明 政治的「妥結」を、真の「解決」につなげよ 2015年12月28日、ソウルで行われた日韓外相会談において「慰安婦」問題を最終的に解決する合意に至ったと発表された。日韓両政府が合意した内容は、武力紛争下で甚大な性暴力被害を受けた女性たちに対する被害回復措置としては、国際的な基準から見ても甚だ不十分である。日本政府は、被害者不在のまま政治的妥結をつきつけ、苦渋の選択を被害者にせまること自体が暴力的であることを、「女性のためのアジア平和国民基金」の経緯を通じて学んでいないといわざるを得ない。 アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)は、日本軍「慰安婦」制度の歴史的事実を二度と同じ過ちを繰り返さないために次世代に伝え、女性に対する暴力のない平和な社会をつくるために活動してきたミュージアムである。一人でも多く存命のうちに、すべての被害者が受け入れられるような被害回復措置の在り方を、アジア太平洋各地の被害者および被害国の支援団体とともに議論し、具体的な提言としてまとめる作業にも関わってきた。高齢になった被害女性たちが早く安堵したいと思いながら、やむにやまれぬ気持ちで声をあげ続ける姿を見てきた者にとって、被害者が受け入れられる形で「解決」されることは、切実な願いだった。だからこそ、被害者不在のままに政治的に「妥結」した日韓両政府に対して怒りを禁じ得ない。 一方で、安全保障政策を最重要視する米国の圧力のもと、被害者の声を一言も聞いていないにもかかわらず、日韓両政府が「最終的かつ不可逆的に合意」するという愚かな約束をしたことで、韓国政府が日本政府に外交的な交渉をすることは、極めて難しい状況になった。被害を受けた女性たちが感じている大きな怒りと失望を、どうにか希望につなげたい。私たちは、日韓政府の政治的「妥結」を、被害者が受け入れ可能な「解決」につなげる道を、時間がかかっても丁寧に探っていきたいと思う。 以下は、今般の日韓両国の合意に基づき、日本政府が為すべき、そして現実的にこれから為し得る措置の提言である。なおこの提言は、被害者の意思を確認したものではないため、被害を受けた女性たちの要求はもっと厳しい可能性も、また妥結そのものを拒否する決断もあり得ることを付記しておく。 1、責任の認知 今回の合意において、日本軍の「慰安婦」にされた女性たちに対して、日本政府は「責任を痛感している」と、国家の責任を明確に認めたことは率直に評価する。遅きに失したとはいえ、これまで使っていた「道義的」「人道的」などという不用意な言葉を使わず、全面的に国の責任を認めたことは、今後の施策を進めるうえで重要な前提となる。一方で、公共放送をはじめとした報道各社が、今回の「責任」は「道義的責任を意味する」といった誤った解釈を報道しており、これでは政府の努力はまったく意味をなさない。 提言1:日本政府は、責任に「道義的」といった限定をつける報道に反駁し、それ以上でもそれ以下でもない「責任」を痛感していることを繰り返し表明しなければならない。 2、謝罪 安倍総理大臣が内閣総理大臣としてお詫びと反省の意を示したことは評価できる。しかし、安倍総理大臣のお詫びを岸田外相が「代弁」する形で発表され、安倍総理大臣が朴槿恵大統領に電話でお詫びを伝達するという形式は、被害者が求めていた公式謝罪としてはとうてい認められない。国家の人権侵害に対する謝罪のあり方として、欧米、例えば米国の日系人強制収容所の被害者への謝罪の形式等と比較しても、はなはだ不十分である。 提言2:内閣総理大臣のお詫びと反省は、安倍総理大臣から、口頭または文書等の形式で、被害者に直接伝達されなくてはならない。 3、事実の認知 今回の合意の最大の問題点は、「当時の軍の関与の下」という「河野談話」と同じ曖昧な表現にとどまったことである。日本軍「慰安婦」制度に関する事実を、曖昧さのない形で明確に認めることは、被害女性たちが求めてきた被害回復のために不可欠である。すでに公文書等によって十分に明らかにされているように、日本軍が設置した慰安所は、当時の軍が立案し、組織的に管理、運営した軍の後方施設だった。また、女性たちの意に反して連行し、強制的な状況のもとで性行為を強要した日本軍「慰安婦」制度は、女性たちの名誉と尊厳を傷つけただけでなく、女性の人権を侵害する甚大な犯罪的行為だった。 提言3:どのような行為に責任を痛感し、「お詫びと反省」をしているのかを明らかにするため、女性たちを意に反して連行した事実を認めた「河野談話」を踏襲する意志を明確に示すとともに、慰安所設置の主体が日本軍であった事実、およびこれらの行為が人権侵害であったことを認めなければならない。 4、韓国が設置する財団への拠出 韓国政府が設置する財団に日本政府が国庫から拠出するという構想は評価が分かれている。私たちは、韓国政府が設置することで、財団という形式をとりながらも「女性のためのアジア平和国民基金」とは一線を画したこと、また日本政府が「責任を痛感」したうえで、日本の国庫から拠出されるお金は、日本政府からの「謝罪の証」であると認められる可能性があると考えている。 提言4:韓国が設置する財団の事業を被害者が受け入れられるようにするためには、これらのお金が「謝罪(またはお詫び)の証」であることを、拠出の際に日本政府は明確に示さなければならない。また、「名誉と尊厳の回復、こころの傷の癒やし」を目的とする財団の運営は、被害者と支援団体の意見を十分に聞いたうえで実施しなければならない。被害者の傷を癒やす目的で実施する事業であることに鑑み、財団の実施する事業について、日本政府は被害者の意思に反する要求をしてはならない。10億円の税金を活かし、「解決」につなげることは、納税者に対する日本政府の義務である。 5、平和の碑、記憶の継承について 今回の政治的妥結で、最も被害者の心を逆なでしたのは、在韓国日本大使館前の「平和の碑」を撤去するよう求めた日本政府の態度である。被害者の心の傷を癒やしたいという日本政府の発言が真意であれば、本来、花を手向ける行為こそが求められている。「慰安婦」被害者を含む市民によって設置された「平和の碑」の撤去は、そもそも交渉内容に入れてはならず、「被害者の納得する措置」を求めてきた韓国政府は、撤去に向けた努力さえすべきではない。 提言5:在韓国日本大使館前の「平和の碑」や、米国等で設置される記念碑は、武力紛争下の性暴力根絶や、被害者の名誉と尊厳の回復を求めるグローバルな市民の行動の表れであることを、日韓両政府は認識しなければならない。そして、日本の負の歴史を次世代に引き継ぐ意思を示すために、日本政府はこれらの碑に反対する行為は控えなければならない。 6、真相究明と教育、否定への反駁 真相究明や、教育を通じた歴史の継承について、今回の合意事項ではまったく触れられなかった。しかし、自分たちと同じような被害が二度と誰にも起きないように、歴史の事実を教訓として伝えていくことは、被害者の名誉と尊厳の回復のために最も重要かつ不可欠な要素である。 提言6:日本政府は、政府保有資料の全面公開、国内外でのさらなる資料調査、国内外の被害者および関係者へのヒヤリングを含む真相究明、および義務教育課程の教科書への記述を含む学校及び一般での教育を奨励していかなくてはならない。また、歴史の事実や日本の責任を否定する公人の発言には、断固として反駁しなくてはならない。 7、国連等の国際社会に対する働きかけについて 「国連など国際社会でたがいに非難、批判することを控える」と両国が表明したことは、日韓両国が日本軍「慰安婦」問題を、グローバルな女性の人権課題だと認識していないことの表れである。韓国の被害者を含め、日本軍によって重大な人権侵害を受けた「慰安婦」被害者が被害回復を求めるのは当然の権利であり、日本政府が真摯な対応をしない限り、国際社会からの要求は継続することを認識すべきである。とりわけ、国連ユネスコ記憶遺産への日本軍「慰安婦」に関する記録の登録は、武力紛争下で軍隊から性暴力を受け、生き抜いた女性たちの生の記録として保護に値するものであり、重要な世界的遺産として、本来であれば日本政府が自ら推進すべき事業である。 提言7:日本政府は、国連人権機関の勧告を真摯に受け止め、女性の人権の確立、日本軍「慰安婦」制度の歴史の記憶化に向けた国際社会の取り組みを妨害してはならない。 今回の政治的「妥結」を、最終的な「解決」につなげられるかどうかは、日本政府のこれからの行動にかかっている。日本軍の「慰安婦」にされたために、戦後の70年をも過酷な人生を強いられた被害者たちが、最後のひとときを安堵し、心安らかに過ごせるよう、私たちはどのような努力も惜しまない。そして、この日韓政府の合意事項の行方を、固唾をのんで見守っているであろうアジア太平洋各地の被害者に対しても、同様の被害回復措置をとることを求める。 2015年12月31日 アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam) 〒169-0051 東京都新宿区西早稲田2-3-18 AVACOビル2F