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3-5 『朝日新聞』の誤報で「慰安婦」問題がねつ造されたの? [page]

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『朝日新聞』攻撃と日本軍「慰安婦」問題の否定

『朝日新聞』は2014年8月5、6日に「慰安婦問題 どう伝えたか 読者の疑問に答えます」という報道の点検記事を掲載しました。「吉田清治氏が済州島で慰安婦を強制連行したとする証言は虚偽だと判断し、記事を取り消します」とし、また「慰安婦と挺身隊の混同がみられた」ことも認めました。

 

この点検記事に対して、『読売新聞』や『産経新聞』などの全国紙や多くの週刊誌・月刊誌をはじめとするメディア、さらには政府自民党などの政治勢力が、〈吉田証言はウソ→強制連行はなかった→慰安婦問題は朝日によるねつ造→国際社会にウソを広めた〉という単純な図式で、『朝日新聞』攻撃と、日本軍「慰安婦」問題そのものがねつ造だという異常なまでのキャンペーンを展開しています。

 

そもそも吉田証言が日本軍「慰安婦」問題の火付け役だったという認識がまちがいです。吉田さんの問題の著書『私の戦争犯罪』は一九八三年に出版されています。当時、中曽根内閣で、元日本軍将兵らの加害証言が出はじめていましたが、「慰安婦」問題は、とくに社会問題にはなりませんでした。「慰安婦」問題が大きな社会問題、さらには国際問題になったのは、1991年8月に韓国でさんが、元「慰安婦」として名乗り出たことでした。そして同年12月に金さんを含む三人の元「慰安婦」の女性たちが韓国人の元軍人・軍属たちとともに日本政府を相手取って賠償を要求する訴訟を起こしました。このことが多くの良心的な日本の人々に大きな衝撃を与えました。衝撃を受けた一人が吉見義明さんで、吉見さんは金さんの証言を聞いてから改めて防衛研究所図書館に通い関連文書を探し、それを1992年1月に発表しました。これによって「民間の業者」が勝手に連れて歩いただけだという日本政府の言い訳が完全に否定され、日本政府は日本軍の関与を認めざるを得なくなり、日本の国家としての責任が追及されるようになります。

 

金順学さんが名乗り出たことに勇気づけられた韓国をはじめ各国の被害者が次々と名乗り出て、日本軍「慰安婦」問題が国際問題となったのです。

 

吉田証言には依拠していない

日本軍「慰安婦」問題の研究も実質的にここからはじまりますが、その時に吉田清治証言をどう考えるのかが問題になります。この点は、信頼できる証言としては扱えないというのが研究者の共通の理解となりました。

 

当然、吉見義明さんの『従軍慰安婦』(岩波新書、1995年)でも吉田証言はまったく使っていませんし、「河野談話」作成にあたって吉田証言には依拠しなかったことも明らかにされています。ですから、今回の『朝日新聞』の点検を理由に「河野談話」見直しを要求するのはまったくの筋違いと言えるでしょう。

 

多くの元日本軍「慰安婦」の女性たちの証言、さらには元日本軍将兵の証言や戦記・回想録、日本軍や政府の数多くの公文書などにもとづいて研究が行なわれ、日本軍「慰安婦」制度の全体構造とそのなかでの女性たちの被害実態が解明されてきました。それらの成果はさまざまな出版物、講演会などで市民に広げられ、元日本軍「慰安婦」の方たちの日本政府を相手取った訴訟においても活用されてきました。

 

朝日バッシングでなされている主張は、この20年来の研究成果をまったく無視したものです。20年以上にわたる研究者市民の努力による多くの資料の集積と、それをベースにした研究の成果をふまえた議論がなされるべきでしょう。また、「河野談話」発表以降でも500点以上の「慰安婦」関連の公文書が発見されており、本来、日本政府がきちんと収集しそれらをふまえて日本政府の対応がなされるべきではないでしょうか。

 

『朝日新聞』の報道が国際社会に悪影響?

さらに否定派の攻撃内容の一つは、『朝日新聞』によるねつ造が国際問題化した原因であるかのような主張です。そのなかで国連人権委員会から「女性への暴力に関する特別報告者」に任命されたクマラスワミさんが1996年に提出した最終報告書、いわゆるクマラスワミ報告書のなかで、吉田清治証言を引用していることを理由に、国際的にまちがった情報にもとづいて日本批判がなされているかのような言い方がされています。

 

日本の戦争責任資料センターは、この報告書を日本語に訳していますが(簡易製本版として自費出版)、その冒頭に解説をつけ、事実誤認がいくつもあることを指摘しています。その原因の一つがジョージ・ヒックス著『Comfort Women』に依拠していること、ヒックスさんが引用している吉田清治証言を採用していることを批判しています。ヒックスさんの著作はまちがいが多く、日本の研究者は誰も引用しないと言ってよいほど信頼性に欠けるものですが、それに依拠している点にこの報告書の最大の問題点があるでしょう。

 

ですから、『朝日新聞』の報道が国際社会に悪影響を与えたというよりは、当時、英文資料としてはヒックスさんのまちがいだらけの本しかなかったことが問題だったと言ういうべきでしょう。ただし、報告書の構成からみると、吉田清治証言を削除しても文章の流れには影響ない程度の記述に留まっていることも指摘できます。

 

そして、この報告書が一つの章を被害女性たちの生の証言の要約にあてているという特徴もあります。報告書でクマラスワミさんは「調査団の活動中、特別報告者がとくに心掛けたのは、元「慰安婦」の要求を明確にすることと、現在の日本政府が本件の解決のためどんな救済策を提案しつつあるのかを理解することであった」、さらに「この報告の意図が、暴力の被害を受けた女性たちの声に人々が耳を傾けるようにすることである」とも述べています。つまり、この報告書は被害女性の声を重視して作成されたもので、そのうえに立って勧告がなされたのです。

 

その後、吉見義明さんの『従軍慰安婦』が2000年に英訳されるなど日本の研究が英文でも発表されるようになり、多くの日本軍・政府関連文書が英訳で提供されるようになりました。そうしたなか、2000年12月に開催された女性国際戦犯法廷では、厳密な事実認定がなされるようになりました。国際的な人権機関の認識は吉田証言のレベルに左右されているものではありません。元日本軍「慰安婦」にされた女性たちの証言が、国際社会に大きな衝撃を与え、同時に日本軍文書にもとづく研究がそれを支えたと言えるでしょう。

(2014年10月24日更新)

 

参考文献

日本の戦争責任資料センター『R・クマラスワミ国連報告書』日本の戦争責任資料センター、1996年
VAWW-NET ジャパン編『女性国際戦犯法廷の全記録Ⅱ 日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷Vol6』緑風出版、2002年
吉見義明「河野談話検証は何を検証したのか」『世界』2014年9月

4-1 国連クマラスワミ報告 [page]

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国連クマラスワミ報告とは

クマラスワミ報告書とは、1995年から2002年にかけて、ラディカ・クマラスワミ「女性に対する暴力、その原因と結果に関する特別報告者」が国連人権委員会に提出した数十本の報告書のことです。日本では、そのうち特に1996年の「日本軍性奴隷制に関する報告書」を指すのが一般的です。

 

クマラスワミ特別報告者は1994年の国連人権理事会で任命されました。クマラスワミ報告書は、1993年に国連総会で採択された「女性に対する暴力撤廃宣言」の定義に従って、家庭における女性に対する暴力、社会における女性に対する暴力、国家による女性に対する暴力の3つの分類を基にしています。日本軍性奴隷制に関する報告書は、国家による女性に対する暴力の重要事例の一つとして取り上げたものです。

 

4-1画像Ms-Radhika-Coomaraswamyクマラスワミ特別報告者はこんな人

クマラスワミ特別報告者はスリランカの女性弁護士で、スリランカ人権委員会委員長です。1993年のウィーン世界人権会議の決定によって、国連人権委員会に「女性に対する暴力特別報告者」を設置することになり、1994年の国連人権委員会の決定によってクマラスワミ特別報告者が任命されました。クマラスワミ報告者は、1995年から2002年まで女性に対する暴力の撤廃に向けて多くの報告書を国連人権委員会に提出しました。女性に対する暴力特別報告書の任務終了後、国連事務総長から委嘱されて「子どもと武力紛争特別代表」として活躍しています。

 

報告書の特徴

クマラスワミ特別報告者は、1995年7月にソウルと東京を訪問して、韓国政府及び日本政府から聞き取りを行い、資料の提供を受けました。平壌も訪問予定でしたが、期日が合わなかったため訪問できなかったので、人権センター代表が代理で訪問して調査しました。報告書はこれらの資料に基づいています。

 

クマラスワミ報告書は、「慰安婦」問題を「戦時、軍によって、または軍のために、性的サービスを与えることを強制された女性の事件を軍事的性奴隷制の慣行」と定義しています。第1に、国連人権委員会差別防止少数者保護小委員会で議論されてきた性奴隷制および奴隷類似慣行の概念が有益であること、第2に、「慰安婦」という言葉は被害実態を示すのに適切でないことから「軍事的性奴隷」という言葉の方が適切であるとしています。

 

クマラスワミ報告書は、16人の被害者から聞き取りを行っていますが、チョン・オクスン、ファン・ソギョン、ファン・クムジュ、ファン・ソギュンの証言を紹介しています。

 

クマラスワミ報告書は、自国の法的責任を否定する日本政府の立場を紹介・検討して、現代国際法の下では、重大人権侵害についての責任者の訴追や、被害者の賠償請求権が認められていることを明示しています。1907年のハーグ陸戦規則や、1929年のジュネーブ捕虜条約、そしてニュルンベルク・東京裁判憲章などに照らして、当事の国際法の下でも日本政府に責任があったことを確認しました。

 

報告書の勧告

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クマラスワミ報告書は、最後に、日本政府と国際社会に対して勧告を出しています。日本政府に対する勧告は次の6項目です。

 

(a)第2次大戦中に日本帝国軍によって設置された慰安所制度が国際法の下でその義務に違反したことを承認し、かつその違反の法的責任を受諾すること。

(b)日本軍性奴隷制の被害者個々人に対し、人権および基本的自由の重大侵害被害者の原状回復、賠償および更生への権利に関する差別防止少数者保護小委員会の特別報告者によって示された原則に従って、賠償を支払うこと。多くの被害者がきわめて高齢なので、この目的のために特別の行政審査会を短期間内に設置すること。

(c)第2次大戦中の日本帝国軍の慰安所および他の関連する活動に関し、日本政府が所持するすべての文書および資料の完全な開示を確実なものにすること。

(d)名乗り出た女性で、日本軍性奴隷制の女性被害者であることが立証される女性個々人に対して書面による公式謝罪をなすこと。

(e)歴史的現実を反映するように教育カリキュラムを改めることによって、これらの問題についての意識を高めること。

(f)第2次大戦中に慰安所への募集および収容に関与した犯行者をできる限り特定し、かつ処罰すること。

 

報告書への批判

クマラスワミ報告書に対しては、国連人権委員会は報告書を留意したが、歓迎したのではないという指摘がなされました。また、 「事実誤認がある」との指摘もあります。

 

第1に、1996年の国連人権委員会53会期は盛大な拍手でクマラスワミ報告者を迎えました。そして、全会一致でクマラスワミ報告者の活動を「歓迎」し、報告書に「留意」したのです。全会一致ということは、日本政府も反対できなかったということです。国連人権委員会は、国連加盟国から選挙で選ばれた53カ国の政府によって構成されていて、当時、日本政府も人権委員の地位にありました。

 

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第2に、報告書には一部に事実誤認があることが指摘されています。確かに一部に誤認はあります。しかし、報告書全体の趣旨を損なうような大きなミスはありません。重要なことは、クマラスワミ特別報告者は、日本政府を含む国連人権委員会の決議によって特別報告者に任命され、日本政府の招待を受けて日本を訪問し、日本政府から情報提供を受けて、報告書を作成したという事実です。

 

日本政府が適切かつ十分な情報を提供したにもかかわらず十分な報告書にならなかったのならばクマラスワミ特別報告者を批判することができるでしょう。しかし、事実は逆です。もし、報告書に不備があったとすれば、十分な調査をしなかった日本政府、必要な情報公開をしなかった日本政府にその責任があるのです。

 

第3に、1996年の国連人権委員会で、日本政府が「怪文書」を配布したことを忘れてはなりません。クマラスワミ報告書の否決をめざした日本政府は、報告書に反論する文書を準備して、人権委員会事務局に提出し、一部の政府代表に配布しました。ところが、この反論文書は特別報告者を不当に中傷していると批判の声があがったため、日本政府は反論文書の撤回を余儀なくされました。日本政府はこの文書の存在を隠そうとしましたが、国連人権委員会会場で配布され、すでにコピーが出回っていて、多くの人権NGOがコピーを入手しました。その後、日本政府は「説明用の資料にすぎない」と釈明しました。国連人権委員会という国際舞台で日本政府が「怪文書」をばらまいたのは、それだけクマラスワミ報告書が痛手だったからでしょう。

 

報告書の意義

 

クマラスワミ報告書は、武力紛争時における女性に対する性暴力に対して、現代国際法がどのような対処を可能としているのか、また、どこに不備があるのかを示す重要な役割を果たしました。国際人権法と国際人道法を適用することで責任追及をなしうる場合と、現在の国際法では十分な対処ができない場合の限界について明確にしました。1996年当時は、国際刑事裁判所を設置するための国際交渉が行われていたさなかであり、旧ユーゴスラヴィア国際刑事法廷やルワンダ国際刑事法廷の活動も始まったばかりで、まだ判決が出ていませんでした。クマラスワミ報告書が示した武力紛争時における性暴力に対する訴追と処罰は、1998年以後に実現していくことになりました。

 

「慰安婦」問題についても、当時の国際法の解釈によって日本政府の法的責任を解明できることが判明しました。クマラスワミ報告書の国際法の議論は、1998年のマクドゥーガル報告書や2000年の女性国際戦犯法廷に継承されました。

 

クマラスワミ報告書の勧告は人権NGO・市民運動に歓迎され、クマラスワミ6項目勧告として、被害者の請求を求める運動の出発点となりました。クマラスワミ報告書に反発した日本政府でさえ、法的責任は認めないものの、個人被害者に対する賠償に代わる措置、首相による「お詫び」の手紙、学校教育への反映など若干の措置を講じざるを得なくなりました(その後、逆転していきますが)。

<参考文献>

ラディカ・クマラスワミ著・クマラスワミ報告書研究会訳『女性に対する暴力――国連人権委員会特別報告書』明石書店、2000年

ラディカ・クマラスワミ著・VAWW-NETジャパン翻訳チーム訳 『女性に対する暴力をめぐる10年--国連人権委員会特別報告者クマラスワミ最終報告書』明石書店、2003年

4-5 国連人権理事会普遍的定期審査(UPR) [page]

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Human Rights Council

国連人権理事会(United Nations Human Rights Council , 略称UNHRC)は、2006年の創設以来毎年、すべての国連加盟国の人権状況を順次審査する普遍的定期審査(Universal Periodic Review, 略称UPR)制度を採用しました。日本政府も、2008年と2012年に審査対象となりました。日本の人権状況に関して諸外国から様々な是正勧告が出されています。日本軍性奴隷制に関しても勧告が出されています。

 

第1回審査(2008年)

ジュネーヴの国連欧州本部で開催された国連人権理事会は、2008年5月9日、普遍的定期審査作業部会において日本の人権状況について審査を行いました。全部で26項目の勧告が出されましたが、日本軍性奴隷制に関する勧告は次の通りです。

 

「5 第2次世界大戦中の『慰安婦』問題に関する、国連諸機関(女性に対する暴力に関する特別報告者、女性差別撤廃委員会および拷問禁止委員会)による勧告に誠実に対応すること(韓国)。」

「10 日本における継続的な歴史の歪曲の状況に取り組む緊急措置をとること。これは、過去の人権侵害および再発の危険性に取り組むことを拒否している現れであるためである。また、現代的形態の人種主義に関する特別報告者からも呼びかけられたように、この状況に取り組む緊急措置を勧告する(朝鮮民主主義人民共和国)。」

「18 軍隊性奴隷問題、および朝鮮を含む諸国で過去に犯した人権侵害に取り組むため、具体的な措置を講じること(朝鮮民主主義人民共和国)。」

 

普遍的定期審査制度が始まって間もないため、各国とも手探り状態でした。そのためか日本政府に対する勧告は26項目です。他の諸国に対する勧告と比較して特に差があったわけではありませんが、後の2回目の審査では大幅に増えたのと比較すると、少なかったと言えます。その中で、「慰安婦」問題については当事者である韓国と朝鮮の2カ国が勧告を出しました。普遍的定期審査の勧告は、単に韓国と朝鮮がそう主張したというだけではなく、審議を経た後に作成される人権理事会普遍的定期審査報告書に記載され、正式文書として人権理事会で採択されました。

 

第2回審査(2012年)

ジュネーヴの国連欧州本部で開催された国連人権理事会は、2012年10月31日、日本に関する2回目の普遍的定期審査結果を作業部会報告書としてまとめ、174項目の勧告を含む報告書を採択しました。

日本軍性奴隷制に関する勧告は、次の通りです。

 

「いわゆる『慰安婦』問題について法的責任を認め、関連する国際共同体によって勧告されたように、被害者が受け入れることのできる適切な措置を講じよ(韓国)」

「過去と現在に向き合い、国際共同体に責任ある調和をとるよう再考し、慰安婦問題に関する謝罪を行い、その被害者に補償をせよ(中国)」

「第2次大戦中に用いられた『慰安婦』問題の責任を認め、被害者の尊厳を回復し、適切に補償する措置を講じよ(コスタリカ)」

「日本軍性奴隷制及び朝鮮を含むアジア諸国における過去に行ったその他の侵害について法的責任を受け入れ、きっぱりと対処せよ(朝鮮民主主義人民共和国)」

 

さらに、歴史教科書問題に関連して、次の勧告がなされました。

 

「学校教科書に慰安婦問題を盛り込むなどの措置を取ることによって、歴史の全側面を将来の世代に伝達し続けよ(オランダ)」

「教育課程に過去の犯罪と虐殺を含む歴史の事実を反映させることによって、過去の歴史の歪曲を終わらせ、歴史の事実への関心を高めよ(朝鮮民主主義人民共和国)」

 

2008年の第1回審査では、26だった勧告が174と大幅に増えました。普遍的定期審査が2順目となり、各国とも精力的に審査に加わるようになったことと、人権NGOの活動が活発となったためと思われます。

 

このため限られた時間の中で非常に多くの人権問題が語られ、「慰安婦」問題が霞んでしまうのではないかと危惧されましたが、第1回審査で勧告を出した韓国と朝鮮の2カ国に、中国、オランダ、コスタリカが加わり、5カ国になりました。中国、オランダも「慰安所」被害者のいる当事国ですが、コスタリカは関係当事国ではありません。日本軍性奴隷制度に関する法的責任を否定する日本政府の主張に、国際的な支持が得られないことがますます明白になりました。

 

普遍的定期審査とは何か

人権理事会は、2006年3月に国連総会で採択された「人権理事会」決議により、国連総会の下部機関として設置されました。国連における人権主流化の流れの中で、人権問題への対処能力を強化するため、従来の人権委員会に替えて新たに設置されました。ジュネーブにある国連欧州本部で開催されます。

 

人権理事会は47ヶ国で構成されます。地域的配分は、アジア13、アフリカ13、ラテンアメリカ8、東欧6、西欧7となっています。2006年6月の第1回会合以来、理事会会合(通常会合と特別会合)や各種の作業部会(ワーキング・グループ)等を開催し、テーマ別及び国別の人権状況にかかる報告や審議を行ってきました。

 

普遍的定期審査という制度が採用され、国連加盟国各国は4年に1回、人権状況を審査されます。理事国は任期中に優先的に審査されます。審査基準は、国連憲章、世界人権宣言、当該国が締結している人権条約、自発的誓約、適用されうる人権法です。

 

審査は、次の3文書に基づいて行われます。

 

①被審査国は、「ガイドライン」に基づいて20頁以内の報告書を作成し、人権高等弁務官事務所に提出します。

②人権高等弁務官事務所は、被審査国に関する条約機関及び特別手続による報告並びに関連する国連公用文書を編集した文書を準備します。

③人権高等弁務官事務所は、NGO等関係者が同事務所に提出した信憑性と信頼性のある情報を要約した文書を準備します。

 

審査結果文書は人権理事会本会合で採択されます。結果文書は、勧告や結論と被審査国の自発的誓約から構成されます。

 

書映 戸塚悦朗普遍的定期審査と勧告の意義

「慰安婦」問題について国際法の下で日本政府に責任があることは、1996年のクマラスワミ報告書、1998年のマクドゥーガル報告書、2000年の女性国際戦犯法廷判決(2001年最終判決)によって明らかになっていましたが、日本政府はその後も、法的責任を認めず、今日に至っています。この間、韓国、朝鮮、中国などの関係当事国が日本政府の法的責任を根拠に被害者への賠償等を求めてきました。また、アメリカ議会、EU議会なども日本政府に解決を求めてきました。ILOの条約適用委員会も日本政府に解決を求めています。そして、国連人権理事会も日本政府に解決を求めています。日本政府の国際法解釈はあまりに特異なもので、国際社会に通用しないことが明白です。

 

<参考文献>

戸塚悦朗『国連人権理事会――その創造と展開』日本評論社、2009年

Universal Periodic Review HP

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