2-2 安倍政権と2007年の閣議決定

2007年閣議決定は「河野談話」を修正?

第1次安倍内閣は、日本軍「慰安婦」問題について、国会議員の質問主意書に答える答弁書をいくつか閣議決定しています。その際、1993年の河野談話を否定ないし修正したかのような言説が一部に流されています。

 

たとえば、安倍晋三氏は2012年の自民党総裁選挙で、「安倍政権のときに「強制性はなかった」という閣議決定をしたが、多くの人は知らない。河野談話を修正したことを、もう一度確定する必要がある」と河野談話の見直しに言及したと報道されています(『朝日新聞』2012年9月16日)。

 

2007年の閣議決定とは

事実はどうでしょうか。安倍首相は、辻元清美衆議院議員の質問に対して、2007年3月16日に答弁書(内閣衆質166第110号、下記資料を参照)を送付しています(内閣衆質166第110号)。この答弁書は、河野談話の発表までに「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」と述べています。

「軍や官憲によるいわゆる強制連行」というのは、軍や官憲による暴行・脅迫を用いた連行(軍・官憲による略取)という意味ですが、そのことを「直接示すような記述」はなかった、といっているだけです。証言はなかったとはいっていません。慰安所における強制や、軍・官憲が選定した業者による略取・誘拐・人身売買についてもなかったとはいっていません。

また、この時までに政府が把握していなかった、軍・官憲による略取を「直接示すような記述」が数多くあることは、Q&Aを見てください。なお、河野談話発表の前年には、『朝日新聞』(1992年7月21日夕刊・同年8月30日朝刊)が、軍・官憲による略取を「直接示すような記述」があるスマラン事件の調査結果(→ Q&A 2-6「スマラン事件で日本軍は責任者を罰した?」へ飛ぶ)を公表しているので、なかったというのはおかしいですね。

 

「河野談話」を継承した2007年の閣議決定

さらに、この答弁書では、河野談話について、「官房長官談話は、閣議決定はされていないが、歴代の内閣が継承しているものである」「政府の基本的立場は、官房長官談話を継承しているというものであり、その内容を閣議決定することは考えていない」と述べています。改めて閣議決定はしないけれども、河野談話は継承すると閣議決定されているのです。