[増補改訂版] 〈平和の少女像〉はなぜ座り続けるのか

  • 著者 : 金富子(責任編集), 岡本有佳(責任編集), 日本軍「慰安婦」問題Webサイト制作委員会(編集)
  • 出版 : 2016年09月 世織書房
  • 頁数 : 114

◎ 梁鉉娥(ジェンダー法学/ソウル大学法学専門大学院教授)論考収録
◎ 〈ベトナムのピエタ〉・さまざまな場でつらなる〈平和の少女像〉など最新情報追加
◎ 〈平和の少女像〉地図・全画像一挙掲載
◎「平和の碑」(平和の少女像)をめぐる年表追加

【増補改訂版刊行にあたってより】

2015年12月28日の日本軍「慰安婦」問題に対する日韓外相「合意」によって〈平和の少女像〉撤去・移転の危機が高まったことをきっかけに今年二月末に緊急出版した本書は、約二カ月で重版が決まりましたが、事態が急展開しているため、その新たな動きと韓国からの論考を加え、増補改訂版にすることにしました。……(中略)…… 日韓「合意」後もさらに韓国各地や、オーストラリアで建立された〈平和の少女像〉を追加し、さまざまな場でつらなっていく〈平和の少女像〉についても加筆しました。また、「慰安婦」被害女性や市民、芸術家らが取り組む韓国の加害であるベトナムでの民間人虐殺に対する謝罪と鎮魂の〈ベトナムのピエタ〉像レポートなどを追加しました。加害の記憶の継承は、日本だけでなく韓国の課題でもあります。
さらに、第3部を新たに設けて、日韓共同シンポジウムで発表された梁鉉娥さん(ジェンダー法学/ソウル大学法学専門大学院教授)の論考を解題とともに収録しました。梁鉉娥さんの論考は、〈平和の少女像〉を民族主義に解釈したがる風潮に対して、とくに日韓「合意」後に〈平和の少女像〉が韓国政府に対する抵抗の意味に深化したことを指摘し、民族主義だけでは解釈できない、ポスト植民地社会である韓国社会の歴史的社会的文脈を分析しています。本書の末尾には、新たに〈平和の少女像〉をめぐる年表を作成・収録しました。

【目次】

日韓「合意」後の動きと〈平和の少女像〉2016年夏 ―― 増補改訂版刊行にあたって

第1章 〈平和の少女像(平和の碑)〉はどのようにつくられたのか
●「平和の碑」が建つ場所「平和路」(梁澄子)
●資料:「平和の碑」建立のための募金呼びかけ
●人びとと意思疎通できるモニュメントを ―― 制作者キム・ソギョンさん、キム・ウンソンさんに聞く
◆ レポート
・ベルリンのホロコースト記念碑とソウルの〈少女像〉(金富子)
・中国から来た〈少女像〉が隣に座って(岡本有佳)
・高校生たちとともにつくった〈平和の少女像〉(岡本有佳)
・日韓「合意」後、〈少女像〉を守る韓国の若者たち(金富子)
・〈少女像〉から〈ベトナムのピエタ〉像へ(岡本有佳)
・日韓「合意」後、100校の高校に小さな少女像を建てる運動(岡本有佳)
◆ コラム : 時代のアイコン―〈少女像〉、韓国の政治文化の結実(古川美佳)
●〈平和の少女像(平和の碑)〉建立マップ
●各地の〈平和の少女像〉
●さまざな場でつらなっていく〈平和の少女像〉

第2章 〈平和の少女像〉をめぐるQ&A 編
Q1 朝鮮人「慰安婦」は、なぜ少女が多かったのか?(金富子)
Q2 朝鮮人「慰安婦」の特徴は? 日韓「合意」で解決?(吉見義明)
Q3 〈平和の少女像〉は「反日」の象徴なのか?(岡本有佳)
Q4 米国で「慰安婦」碑のせいで日系人や在米日本人の子どもがいじめられている?(山口智美・小山エミ)
Q5 米国の日本人や日系人コミュニティは「慰安婦」問題をどう受け止めているのか?(山口智美・小山エミ)
◆ コラム : 問われるのは、日本社会の言論と日本のフェミニズム(北原みのり)

第3章 韓国から考える
●韓国で考える ―― 梁鉉娥論考〈解題にかえて〉(金富子)
●韓国社会と「慰安婦」被害者の再現 ―― 〈少女像〉批判への再批判(梁鉉娥)
●平和の碑(平和の少女像)をめぐる年表
●参考文献

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